春野行政書士事務所の
お役立ちブログ
2023.1.8
【加害者が現場から逃走:政府保障事業とは】
加害者が、現場から逃走した後、警察の捜索もむなしく、ただ被害だけが残った場合についてです。
前回は、被害者自身が加入している「車両保険(物損)」や「人身傷害補償保険(人損)」が使用できることについて説明しました。
では、それらの保険すら入っていない場合は、どうしたらいいでしょうか?
政府保障事業:被害者の最後の砦
ケガをしたことに対する請求を「政府保障事業」にすることができます。
これは、国(国土交通省)が制度化しているもので、加害者側が不明の場合等、被害者の人損に対し、最低限の支払いをするものです。
支払い内容としては、「自賠責保険」と全く同じで、治療費・交通費・休業損害・慰謝料が支払われます。後遺障害に対しても、支払いがあり、異議申し立てができることも同様です。
受付窓口は、各自賠責保険会社となっています。
しかし、最終支払うことになっているのは、自賠責保険会社ではなく、国です。
そのため、以下の注意点があります。
○支払いがあるまで、異常に時間がかかる
→請求してから支払いまでに最低6ヶ月程度
○社会保険を利用しての治療を受けなければならない
→仮に自由診療でいっても、社会保険利用時の本人負担分しか支払われない
○人身傷害補償保険が使用できる場合は、請求できない
○治療期間については、非常に厳しい
→打撲捻挫であれば、1ヶ月程度しか払われないケースも!
○打撲捻挫からくる神経症状としての後遺障害14級の認定は、ほぼない
→治療期間をそもそも長期間認めないので、後遺症も否認される。
お気づきでしょうか?
とにかく、めちゃくちゃ厳しいです…。厳しい任意保険会社の対応以上に厳しいと言っても過言ではありません。
国は、交通事故の被害者に対して、最後の砦・セーフティネットを形式上用意しているものではありますが、あまりの厳しい内容に、被害者は確実に面食らいます。
お国は「こっちも払いたくないんだよ」と言わんばかりの対応しかしないと思ってください。加害者が不明になったという事情を汲んだ優しい対応などこれっぽっちもありません。
それでも、本当に困ったときは、少しだけの助けにはなるかもしれませんが…。
自賠責保険請求と同じように、政府保障事業への請求も、もちろん行政書士の専門業務になります。
が、弊所では、おケガが打撲捻挫の政府保障事業請求代行は、原則お引き受けしていません。ご本人のメリットがほとんどなくなってしまうからです。
政府保障事業は重症でない限り、意味がない?
上記の特徴がある政府保障事業ですので、大きな期待は禁物です。
繰り返しになりますが、打撲や捻挫でのおケガであれば、「無いよりマシ」という心持ちでいたほうが間違いはありません。
財務省に、自賠責保険のお金を貸し出すのはいいけれども、もしかしてこういったところにしわ寄せが来ているのかな、と勘ぐっていしまいますね。
後遺障害異議申し立て 春野行政書士事務所