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2022.3.12
後遺障害とは
後遺障害異議申し立て手続専門の行政書士 春野です。
後遺症という言葉は、日常的に使用しますよね。
遺ってしまった症状だから、後遺症。しかし、交通事故の後遺症は少し異なります。
交通事故の世界では、後遺症という言葉ではなく、後遺障害、という言葉が使用されています。
この後遺障害とされるためには、自覚するだけでは不十分で、自賠責保険の審査により、認定されて初めて「後遺障害」となり、損害賠償の根拠となります。
等級について
後遺障害には等級が定められています。1級から14級まであります。1級が最も重く、14級が最も軽い後遺障害です。
世の中には、自賠責だけでなく、色々な傷害保険や生命保険等にも、後遺障害の規定がありますが、どのようなケガをすれば、どの等級に当てはまるか、の基準は、どれも同じ基準によっています。ご自身のなにかの保険の規定を見ていただければよりわかりやすいかもしれませんが、どの保険も似たように1から14級までが定められていて、個々の障害の定義もほぼ同じです。この保険は、「14段階ではなく20段階だ」などといった独自の等級システムが設定されていることはまずありません。
その理由は、保険の後遺障害の規定は、すべて労働者災害補償保険(労災)の後遺障害(障害給付)の仕組みを真似て、制度が設計されているからです。
労災=国が定めた後遺症の規定に倣う、ということです。
自賠責保険も例外ではありません。等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行うもの、されています。
しかし、この「準じて」行うというところが、ミソです。
自賠責と労災が認めた等級が違う!?
交通事故であれば、自賠責が適用されるのは当然ですが、お仕事中の事故、また、仕事の行き帰りの事故であれば、労災保険が適用されることもあります。
自賠責も労災も、両方使用するということですね。
治療が最終段階にくれば、後遺障害の請求を自賠責にも労災にもかけることがあります。どちらも満額2重で支払われるわけではありませんが、自賠責で払われないものが労災では支払われることもありますので、両方に請求をかけます。
ケガをされた方からすれば、自賠責で14級が認定されれば、労災も14級が認定される、と思うのが普通です。
「自賠責は労災の基準に準じて」等級を認定するはずだから、そりゃそうです。
しかし…
現実はそう甘くありません。というより、自賠責と労災で異なった結果になることは、実は、普通のことなんです。
自賠責では非該当、労災では14級
自賠責では非該当、労災では12級
自賠責では非該当、労災では10級
など、実は珍しいことではありません。
ここがややこしくもあり、混乱を生むところでもあります。
自賠責は、労災の基準に準じているだけであって、自賠責は自賠責で独自に調査し、後遺障害等級を認定することになっています。
ですから、等級が異なることはよくあることなんですね。
自賠責の後遺障害の認定には、もう一つ特徴があります。上の3つの例で気づかれたかもしれませんが、自賠責の認定のほうが、往々にして、厳しい結果になることが多いです。
弊所にご相談にいらっしゃる方がよくおっしゃいます。
「自賠責では非該当でしたが、労災では12級に認定されました。だから、労災で認定されたということを示す資料を添付して異議申し立てをすれば、等級が変わりますよね?」
答えは、否です。
残念ながら、労災で認定されたことを示す資料を自賠責に新たに提出してもほぼ意味がありません。自賠責はあくまで、労災の基準に準じるだけであり、労災と同じ結果を出すとはしていません。自賠責は自賠責で調査を実施し、結果を出すのです。
自賠責後遺障害の異議申し立てには、別のアプローチが必要になるわけですね。
後遺障害異議申し立て手続専門 春野行政書士事務所