春野行政書士事務所の
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2022.4.13
忙しくて病院に行けない?①
交通事故後遺障害異議申し立て専門、行政書士の春野です。
「交通事故でケガをしたのですが、仕事が忙しくて病院に行けないのですが?」と、ご質問をいただくことがあります。
これは、損保担当者時代もよく言われたものです。
もちろん、手術が必要なケガであったり、入院が必要なケースのことではなく、ここでもやはり事故の件数として最も数の多い「打撲」や「捻挫」の話しとして書きます。
この質問には、大きく分けて2つの意味があるかと思います。
①「通院がしたいけれども、仕事が終わる時間には、病院が閉まっているので、どうしたらいいか?」→物理的にいける、いけないの話
②「仕事や家事に忙しくて、病院で治療を受けることができない。それはどのように損害賠償に反映されるのか?」→お金の話
では、自賠責保険から、そして任意保険からみて、通院できないという事実はどのように扱われるのでしょうか?
まずは、自賠責保険からです。
自賠責からみた「忙しくて通院できない」
まず、結論から。
自賠責保険は、「忙しかったので、治療を受けられない」という事実は、考慮されません。
自賠責保険は、個々の事案を画一的にスピーディーに処理するという目的もありますので、個々人の事情を個別的に判断することはありません。もちろん、全く考慮されない、という訳ではありませんが、原則として厳しいと理解してください。
自賠責保険を利用したい場合、まず事故の日から数えて14日以内に通院をしなければなりません。15日目以降は、その通院と事故との因果関係が確認しづらくなることから、そもそも支払えるかどうかの調査・審査がされることになります。そして、特に考慮する理由がないとの結論になると、治療が認められなくなることもあるのです。
「追突されて首が痛い(ムチウチ)けど、そんなケガで仕事は休めないですよ」
サラリーマンの方なら、これが、普通です。
さすがに事故直後の通院は会社が認めてくれたとしても、継続的に通院するために、休業したり早退したり…というのは気が引けるものです。
この継続的に通院するという点についてですが、さきほどの初診の14日以上の遅れがNGというルールのほか、直近の通院から30日以上の期間があくこともNGとされています。忙しくて、ひと月まるまる治療ができなかった、というのはダメだということです。
これもまた自賠責保険では、通院再開後の治療は、基本的に否認される事案となります。
さて、これらの事案に該当しますと、初診遅れと同じように、「要調査事案」となり、どのような事情があって治療をしていないか、という調査がなされます。ケガをしたご本人にも、質問票が送られてくる場合がありますが、単に「忙しかった」という理由は、あまり意味をなさないというのは、想像に難くないと思います。
「ケガが軽かったので、通院を必要とする状態ではなかったのではないか」
つまるところ、自賠責では、こう判断されるわけです。
ではもう一つ、自賠責保険の賠償面からの答えですが、これははっきりと言えます。
全く考慮されることはありません。”原則”考慮されない、ではなく、何ら考慮されないです。
被害者の方の、痛いのを我慢していた→治療費もかかっていないのだから、相当の補償がされてしかるべきだ、というのは非常によくわかりますが…全く考慮されません。
ご存知の方も多いと思いますが、通院した回数をもとに、痛みを我慢したことによる賠償(慰謝料)を計算するのが、自賠責保険なのです。
一日通院して、治療を受ける。その回数に応じて慰謝料を決めるんです。
ここでもやはり、「通院しなかったってことは、痛くなかったのだろう」という考えが前提にあるように思われます。
まとめとして①物理的に仕事が休めないという理由であっても、②治療代がかからなかったのだから、その分を考慮してほしい、という理由であっても、自賠責はそれらを①はほとんど考慮しない、②は全く考慮しない、ということになります。
そうです。
「症状があるのなら、忙しくても絶対に通院が必要」
というのが、自賠責保険からみた結論になります。
次回、任意保険からみた「忙しくて通院できない」を考えてみます。
後遺障害異議申し立て専門 春野行政書士事務所