春野行政書士事務所の
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2022.9.26
症状固定は誰が決めるのか?
前回までの打ち切りの話にも通じるものです。
「症状固定」の時期とは、誰が決めるものなのか、というテーマを扱いたいと思います。
症状固定とは、症状が固定した状態、それ以上治療してももう効果がないと言える状態です。この状態になった時点を、損害賠償の区切り、もしくは最終日、とするわけです。
取りも直さず、保険会社による打ち切りとは、加害者側からみた「症状固定」だということです。
仮に、重度の後遺障害を負ったとしても、”永遠に”治療を継続される方は、おられません。もしあるとすれば、将来の介護費などは考えられるかもしれませんが、積極的な治療という意味ではないでしょう。
では、いったい症状固定時期としてふさわしいのはいつなのでしょうか?
症状固定=治療の効果が一進一退のとき
症状固定時期は、治療効果がみこめないとき、また、一進一退のときです。
被害者の方にとって、納得がいきにくいのは、治療(リハビリ)をすると、症状が緩和しているという事実があるときです。
「良くなっているんだから、もっと良くなる希望は捨てていない」
こう感じるのも無理はありませんが、その状態が何ヶ月も継続しているということであれば、症状固定の時期に入ってきていると考えるべきでしょう。
まずこの一進一退状態が大前提であることを踏まえて、次のポイントにいきます。
主治医が決めてくれるんでしょ?
医療のプロである医師が決めたらいいのではないか、という方がおられます。
しかし、結論から先に述べるとこれはあまり期待できません。
医師といえども、被害者本人が抱えておられる症状を理解することはできませんし、プロであるからこそ、軽々しく断言できない、という考えのドクターが多いです。症状固定などという言葉は、医療の世界にはないので、その言葉自体使用したくない、という方もおられます。
また病院からすると、お体の不都合を訴える患者さんがきたら、医療を提供する義務がありますので、症状固定時期だからもう来ないでね、ということも、原則、無いです。
医師に決めてもらうべきでない別の理由としては、医師の中にも、症状固定時期をあえてたずねられたら、極端に短い時期をいう方もおられる、ということもあります。
どういうことかといいますと、ムチウチなど打撲や捻挫のケガの場合、「大きな怪我ではない。時間の経過で治る」という考えをお持ちのドクターもおられますので、そういった方々に症状固定時期をたずねると「三ヶ月ですね」と言われてしまうこともあるのです。
万一、そのような回答が医師の口からでると、もう治療すること自体が難しくなるわけです。
症状固定は、被害者が主体になって決めるもの!
「加害者保険会社に決められたくないし、医者も決めてくれないんだったら、どうしたらいいの?」
これに対する回答は、主治医に相談したうえで、「自分で決めましょう」ということになります。主治医に相談することが無意味だということは、全くありません。
あくまで、事前に相談した上で、自分で納得いくところまで治療する、ということが必要なのです。
症状固定の意味をしって、自分が納得いく時点まで、積極的に通院することを当事務所では推奨しています。
といっても、症状固定といって一方的に打ち切られたんですが?
その通りです。加害者保険会社は、一方的に症状固定時期を決定し、その時期を通告してきます。
実際、話し合いの余地もないというケースも多いことでしょう。でも、そんなものなのです。加害者は加害者としての意見を押し付けるのです。
その場合どうしたらいいかということについては、このブログでも何度もお伝えしておりますが、非常に大事な点ですので、何度でも繰り返します。
「自分の納得いくところまで通院を継続する」
これしかありません。いや、これがとっても大事なことです。
相手保険会社が治療費を払ってくれないから、通院をやめた方がおられたとしましょう。この後に時間の経過とともに治るのであれば、それはそれで良いのですが、もし症状が緩和せず後遺障害を申請しなければならなくなれば、一体どうしたらいいでしょうか?
もし、諦めて治療を辞めていたら、病院にはなんの記録も残らず、むしろ治ったから治療を辞めたのではないかと考えられても、不思議はありません。後遺障害の審査の現場でも、同じように考えていきますので、後遺障害の認定可能性を著しく低めることになります。
「嫌だ、自分が悪くないのに治療費を自分で払うなんて許せない!」
この気持ちもよくわかります。しかし、途中で治療を投げ出してしまえば、後に損害賠償を請求するためのもっとも重要な根拠を失ってしまうので、その怒りはグッと堪えて、通院し続けるのです。
通院費が支払えないという方は、病院と交渉し、健康保険に切り替えて通院するなどの工夫をしましょう(交通事故には、社会保険が使用できないという病院は現在ではほとんどありません)。健康保険であれば、自己負担分は、少額に抑えることができます。
そのようにして、ご自身で納得した時期、もうこれ以上の治療は不要だと思う時期まで通院し、自分でここが症状固定だというところまで通院すべきだと考えます。
症状固定時期については、損害賠償の観点も大事ですが、被害者本人の感情面での納得もおろそかにすべきではありません。これが最終解決するときにも大きなプラスとなるのです。
まとめ
症状固定は自分が主体になって決めることができます。そして加害者の意見に、大きく動揺する必要もありません。
加害者は加害者としての意見をいっているだけであって、それが絶対ではありません。
損害賠償の話は、一旦忘れて、自分がどこまでの治療を必要としているかを、落ち着いて考えましょう。損害賠償のことは、治療が終了してから考えても遅くはないからです。
後遺障害異議申し立て専門 春野行政書士事務所