春野行政書士事務所の
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2022.9.19
相手保険からの打ち切りをなんとかできないのか?②
後遺障害異議申し立て専門事務所の春野です。
相手保険からの打ち切りをなんとかできないか、という質問に対して、前回は弁護士を介入させる効果について、お話させていただきました。
相手保険から打ち切りをされた時点から、弁護士を入れることで、治療期間が延びることはほとんどない、ということでしたね。
当事務所では、むしろ、ご自身で交渉することをオススメしています。
自分で交渉するって?
自分で交渉するといっても、そんなことはできないと思われるかもしれません。
しかし、「交渉」という重たい響きに惑わされる必要はありません。
前回も触れたように、保険会社に「お願いする」という意味でとらえていただければ十分です。
弁護士を介入させるデメリットとして、弁護士さんは交渉するために、必ず交渉する”武器”を必要とします。保険会社を納得させるための根拠、ということです。
例えば、大腿骨を骨折された方が事故から3ヶ月程度で保険会社から打ち切られた、とします。骨折箇所がくっつく(癒合)するためには、個人の差こそあれ、少なくとも3ヶ月程度は要するというのは、医学的にいっても明らかです。しかも、くっついただけでは駄目で、並行して徐々に負荷をかけつつ日常の生活に戻すためのリハビリ期間も必要です。
このような推論が成り立つとき、弁護士さんはいわば”武器”を手にするわけです。弁護士さんに依頼して、戦ってくださる可能性もあるでしょう。
しかし、保険会社が、骨折まであるケガに対し、3ヶ月で治療を打ち切ってくることは通常考えられません。なぜなら、保険会社の担当者はなんの理由もなく、感覚に頼って「打ち切りだ~」といってくるわけではないからですね。
ではいつ保険会社は打ち切りしたくなるのか?
それは、一般的にいって(医学的にいって)、「もう治ってもよいと考えてもよい時期にあるにもかかわらず、効果のないリハビリが継続されていると保険会社が感じているとき」、です。
一般的にいって治っただろうと言えて、かつリハビリも十分してもらった。
その後、打ち切り、なのです。つまり医学的な理由がある時期は超えたあとに、感覚による打ち切りです。
逆にいえば、
「骨折しているのに3ヶ月で打ち切り」、「激しい追突でのムチウチだけど、3週間で打ち切り」。いくらなんでもこれはおかしい、という考えは保険会社であれ持っています。
その時期を経過した後に、主観や感覚の交渉が始まります。保険会社も被害者のいうがままに永遠に賠償しつづけることもできないですから、医学的根拠がある時期から一定期間をすぎた頃に、「主観や感覚」をもとに、打ち切りをするわけです。
弁護士さんを入れたとしても、弁護士さんもその感覚や主観の代弁をするだけになってしまいますので、結論的にあまり意味がないとなるわけです。
ちなみに、弁護士さんは、根拠のないことを主張するのを苦手とします(笑)。感覚や主観では、裁判に勝てないですし、相手を納得させることができないからです。治療期間の延長交渉は実は多くの弁護士さんも、あまりしたくない(どうせ無理だろう)、と思っておられると思います。
じゃあ、自分で交渉するって?
前回につづき、打ち切りの話は、どこまでいっても主観の話、感覚の話である、ということを理解していただく必要があります。
とくにムチウチなどの、打撲や捻挫と言われる種類のおケガについては、医学的所見も特になく、医師といえど、「本人が痛いと言っているから治療している」ということに過ぎません。
そのような主観や感覚の交渉に、法律・立証のプロである弁護士を入れても、その被害者の感情を弁護士側から相手保険に伝えてもらうだけになってしまいます。これは、弁護士さんの正しい使い方ではないです。
気持ちや感覚を伝えるだけというのなら、一番の適任は弁護士などの第三者ではなく、本人です!
「どのように生活に影響しているか」
「どのように仕事に影響しているか」
を、保険会社の担当者に丁寧に伝えることができるのは、ケガをされたご本人が一番です。
ここで交渉するにあたり、被害者が忘れやすい重要な事実をお伝えします。
治療期間をのばしてもらえるよう交渉するにあたって、保険会社の担当者に「お願いする」という立場です。
事故の被害者だからといって、横柄・横暴・威圧的な態度や言葉使いは厳に謹んでください。
「北風と太陽」のお話ではありませんが、そのような荒っぽい交渉態度と、人としての礼節をふまえた交渉のどちらが良い結果を生むかは、説明不要でしょう。
どちらも100%ではない…しかし
治療期間延長の交渉は、ご本人がされるのが一番である、という話題でしたが、もちろん物事に100%こうなる、というものはないです。
弁護士を介入させての交渉と、被害者本人が直接交渉する、ということのメリットデメリットを考えれば、後者のほうに軍配が上がるということです。
元損保担当者という立場から申し上げると、後者のほうが飛躍的に治療延長の可能性を高めます。保険会社の担当者は、被害者という事故知識の無い方だという理解があるので、その分を差し引きして考える傾向があるからです。
確かに、どちらの方法を選択したとしても、嫌な気持ちをしたという事実に変わりはないかもしれませんが、被害者は最終的にどちらが得なのか、合理的に考えることも必要なのです。
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