春野行政書士事務所の
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2022.5.5
自賠責保険と治療費③
後遺障害異議申し立て専門、行政書士の春野です。
前回に引き続き、治療費についてです。
自賠責保険に社会保険はそもそも使えるのか?という話です。
自賠責保険を使うのなら、社会保険は使えない!?
治療費をどの保険で対応してもらうか、というのは交通事故の被害者にとって大きな問題となりえます。
結論を先に述べます。
自賠責保険を使用しながら、社会保険(健保・国保、労災保険)を使用することはできます。
同じ「~保険」なので、どちらかしか選択できないのではないか、と感じられるのも無理はありません。
労災保険を使用しながら、健保を使うのができませんので、自賠責と社会保険も、どちらかを選択するものだと思ってしまいますよね(ちなみに、労災と健保も被害者の判断で選択できるものではありません)。
社会保険を適用しつつ、自賠責保険も利用することができます。
では、医療機関で、「交通事故でしたら、社保は使えません」と言われたことがある方は、一体どうしてでしょうか?
理由は、医療機関が間違って理解しているか、自賠責保険が使用できるときは健保を使用させない、というマイルールを運用しているかのどちらかだと考えられます。
後者は、その医療機関の考え方なのでしょうがないとしても(後述しますように、被害者が健保適用を望んでいるのもかかわらず、頑強に使用できないと言われるようであれば、転院されることをお勧めします)、前者の場合は、少し困ってしまいますね。
最近は、そのような理解をまだ持っている医療機関は少なくなりましたが、仮にそこで診療を受けることになっても、受付窓口に健保を出して、「いや、使えます」とはっきり伝えて、適用してもらうようにしたらいいと思います。
どんなときに、自賠責保険と社会保険を併用するか?
繰り返しですが、どちらかを選択して利用する、ではなく、どちらも併用して利用するということです。
どうして、どちらも利用するなんてことがあるのでしょうか?
答えは、治療費を低くするか、そうではないかというところにあります。社会保険を併用しますと、当然のことながら、治療費の基礎となる点数自体が半分になり、さらにそこから本人の負担はたったの3割となりますので、結果として、治療費が圧倒的に安くなります。
治療費を安くしたほうがいいというのは、加害者側から見れば得だからわかりやすいですが、被害者側からみても、そうするほうがいいときもあります。
細かな説明は避けますが、自動車保険の実務上は、以下のように運用されています。
①打撲や捻挫など、治療費がそこまで大きくならないと予想される場合→自賠責保険のみ(つまり、自由診療)で対応する
②骨折以上のケガで、入院や手術を伴う場合。→自賠責保険と社会保険を併用する
交通事故のケガで最も多いのは、①で、全交通事故のケガのうち約7割となっていますので、交通事故の治療のほとんどは、社会保険を利用することなく、自賠責保険(と任意保険)でカバーされています。
そのため、医療機関では(特に、手術や入院対応をしないクリニックでは)、自賠責保険と社会保険を併用するというケース自体に慣れていないところが多いです。
一方、②は、手術や入院を扱う病院では普通のことで、社会保険が使用できないという理解をしている窓口の方はほとんどおられないと思います。
次回、社会保険を併用することのメリット、デメリットついて書きます。
後遺障害異議申し立て専門 春野行政書士事務所