2022.9.16
大規模な保険金不正請求が組織レベルで!?
元損保の査定(支払)担当、行政書士の春野です。
先日から、なにやら損保界隈で、大事になりそうなニュースが聞かれています。
中古自動車買取と販売で有名なビッグモーターが、自動車修理に関する過大な請求を保険会社各社にしていたのではないか、という話題です。
自動車の修理を担当する会社にとって、事故による修理は利益率が高いと言われています。皆さんの街中にもたくさんある、自動車修理工場も、修理作業は毎日のようにありますが、請求先がその車のオーナー自身であったりすると、なかなか請求できない費用というのも実はあります。
しかし、その修理の請求先が、”財布の大きな”保険会社となると、修理工場は「きっちり」「正規」の値段で計算します。そして、事前に保険会社と打ち合わせした金額であれば、間違いなく支払わるという確実性もあります。
なので、事故の修理は、修理工場にとって「おいしい」仕事といえます。
そういった背景の中で、中には不正な請求をあげる修理工場もあります。正規の金額であれば問題はありませんが(この金額でも、事故以外の修理に比べると、十分利益にはなります)、さらに欲をだして、必要でない費用を入れる、やってもいない修理費用を上乗せする、という会社も少なからず存在します。
と、ここまでは誰でも聞いたことがあるというレベルの話なのですが、今回のビッグモーターの不正請求事案は、様相が異なります。
通常、不正請求をしたということが保険会社にバレますと、当然のことながら、保険会社はその会社に対する制裁を考えます。「不正請求金額の返還請求」は当然ですが、軽微な不正であれば「簡単な警告」だけのこともありますが、程度がひどいとなりますと、「取引停止」「告訴」なども検討していきます。
保険会社は、払う必要もなかった費用を無駄に払うことになったから、怒っているので毅然と対応するという構図になるわけですね。
しかし、今回のニュースはここが異なります。
ビッグモーターという大きな会社組織が、もしかするとグループ全体で、不正な過大請求をしていたのかもしれないのに、過大請求を受け支払いをしていたであろう、損保大手の損害保険ジャパンは、「あまりお怒りの様子ではない」、というのです。
ありえません。小さい修理工場がこのようなことをしたら、通常、保険会社はブチギレし、さきほどのような対応を検討するわけです。
そうです。
今回はビッグモーターだけが問題ではないんですね、損害保険ジャパンからも不正の匂いがプンプンしてくるのです。
なぜ、損保ジャパンは、不正を知った今でも、原因究明に消極的なのか?
記事にもありますが、損害保険ジャパンが、この不正請求の調査や責任追及に及び腰なのは、損害保険ジャパンが、ビッグモーターを通じて、保険料をかなり稼いでいる(そしてこれからもそうしてくれるであろう)ことが挙げられています。
ビッグモーターは中古車業界の雄です。抱えている顧客数、販売台数は半端ではありません。そんな会社が、自動車保険の契約をどんどんとってきてくれるわけ、ですね。
そんな大きな仕事をしてくれる得意先が、多少悪いことをしていたとしても、背に腹は代えられない。なんとしてでも稼がなければならない保険の獲得のため、不正請求にそれほど敏感になる必要もない、という黒い背景があったのではないか、と記事は示唆しています。
ビッグモーターに支払う不正請求の金額<ビッグモーターのお客様が加入する保険料
だったら、という算段がなりたっていたのでしょうか?
どこの世界にでもある、でも、あってはいけない、「不正から甘い汁を吸おうとする構造」です。
しかし、これが事実だとすれば、大問題です。
我々各保険契約者が支払ってきた保険料は、実はこれらの不正な支払いがあったことで、高く設定されていたかもしれないという可能性が出てくるからです。
ビッグモーターの不正請求をするために、保険料が不正に釣り上げられていた、ということが万一確認されれば、損保ジャパンは窮地に立たされることになるでしょう。
今後もこのニュースの続報を待ちたいと思います。
後遺障害異議申し立て専門 春野行政書士事務所